そしてなによりそういうことを知ることがとても大切です

 
千葉大がもし100人の村だったら If Chiba University were a village of 100 people (2002)
千葉大学環境シンポジウム実行委員会 著作絵本


もう随分昔、今からおよそ6年前の話になるが、絵本の制作を担当させて頂いたことがある。ここでは、記憶を辿りながら、資料を参照しながら、その絵本に関する話をまとめておきたいと思う。


2001年前後、インターネットを介して、少しずつ内容を書き換えられながら、世界的に広まったひとつの文章(ネット・ロア)がある。「If the world were a village of 100 people(世界がもし100人の村だったら)」というタイトルのついたその文章は、そのタイトルが示す通り、世界の人類に関する統計データの比率(百分率)を人口100人の村にたとえて、人類の多様性や世界の現状を想像しやすいように分かりやすく紹介している文章である。2001年3月に、中野裕弓さんという方が最初にその文章を日本語に翻訳・発信したと言われている。同じく2001年、翻訳家の池田香代子さんとC・ダグラス・ラミスさんが再話した同タイトルの絵本がマガジンハウスから出版された。[1]

その文章の原案であるが、それは1990年5月31日にドネラ・H・メドウズ教授(Donella Meadows)の「The Global Citizen」と呼ばれる連載コラムに書かれた文章「State of the Village Report(村の現状報告)」であると言われている。この時の文章では、世界は人口1000人の村にたとえられている。ドネラ・H・メドウズ教授は、『Limits to Growth(成長の限界)』(Club of Rome, 1972年)の主な著者としても知られている環境学者である。[2]


さて、絵本『世界がもし100人の村だったら』(マガジンハウス刊)が出版された翌年2002年2月頃、僕はその翌月3月30日に開催される予定の千葉大学環境シンポジウムの実行委員会に加わっていた。この実行委員会は、「千葉大学における環境管理システムの導入啓発」を主要テーマに、大学の環境保全委員会(当時)の呼びかけに応じて集まった学生有志12名と環境保全委員会の教員1名によるプロジェクトである。2月12日の初回会合から約1ヶ月半の間に、企画立案・ゲストへの出演交渉・取材撮影・広報活動・資料作成などを行った。そして、その企画のひとつが、池田香代子さんに講演をお願いするというものだった。前述の主要テーマに加えて、「身近なところから地球規模の問題を考えるきっかけづくり」をしたいと考えていたことから、自分たち(わたし・たち)の大学を100人の村にたとえた絵本『千葉大がもし100人の村だったら』を来場者の方々に配布することが決まり、その絵本制作を担当することになった。学部人口の割合や留学生の出身内訳から、交通手段や資源消費に関することまで、既存のデータを基にして文章を構成した。

無事出来上がって、シンポジウム当日にお披露目したこの手作りの絵本。池田香代子さんが喜んで持ち帰ってくださり、その後マガジンハウスや全国大学生協の講演会などで紹介をしていただいたそうで、全国の大学でつくろうかという話が持ち上がった。そして、その見本(キャンペーン用)として、絵本『千葉大がもし100人の村だったら』が実際に出版されることとなった。編集協力はマガジンハウス、発行は生活協同組合連合会・大学生活協同組合東京事業連合。僕は正式に「盗作ディレクター」(絵本のP21に記載)という怪しい肩書きをもらった。


2002年11月1日、A6サイズで32ページの絵本が発行されて(確か5,000部だった)、大学生協などで販売された。今回の絵本の制作にあたって参考にした文献・ホームページは、以下の通りである。データを提供してくださった方々、協力してくださった方々にこの場をお借りして感謝の御礼を申し上げたいと思う。

・千葉大学学報 第823号 平成14年6月1日発行
・率先実行計画実施状況調査 数量的目標のある項目に係る実績調査票 平成12年度
・第36回大学生の消費生活に関する実態調査データ集 千葉大学生協学生委員会
・千葉大学経理部主計課総務係への調査アンケート
・園芸学部松戸キャンパスの大木植物分布状況 小林達明・浅野義人・國分尚 (2001年4月〜8月調査)
・千葉大学ホームページ

この出版を機に、シンポジウムで配布した絵本の内容に加えて、新たに「補足」のページを追加した。補足のページでは、電力使用量や紙の使用量、廃棄物量の近年の推移をあらわしたグラフのデータを掲載するとともに、「1年間に使う紙を敷きつめてみると西千葉キャンパス3コ分の面積になります」とか、「トイレットペーパーは大学全体で1日にフルマラソン分の長さを使っています」とか、あるいは「園芸学部のある松戸キャンパスでは50cm以上の樹木が91科398種も観察されています」といった表現を付け加えた。


また、この出版の話とは別の方向にも、この絵本の話は展開をしていった。3月のシンポジウムの新聞記事をみた千葉大学教育学部附属中学校の先生から直接連絡があり、附属中学校の総合学習の一環としての授業に、この絵本制作を取り入れることになったのである。2002年4月から、中学生12名(2年生9名、3年生3名)を環境シンポジウム実行委員会の大学生数名がサポートして、実地調査や全校生徒へのアンケート調査、データの整理、執筆やレイアウトが行われた。制作された絵本『千葉大附属中が100人の村だったら』は、2002年10月、全校生徒や教員、そして保護者の方々に配布された。既存の統計データや環境側面の調査結果だけでなく、生徒たちが知りたいことをアンケートにして全校生徒(約500名)に対して意識調査をした結果を反映した内容だけあって、とても面白い絵本が出来上がった。


最後になるが、制作した絵本『千葉大がもし100人の村だったら』には、元の絵本『世界がもし100人の村だったら』と全く同じ部分がひとつある。それは、世界であれ、地域であれ、大学であれ、必要とされているということでもある。その部分を引用して終わりたい。

いろいろな人がいる
この村では
あなたと違う人を
理解すること
相手をあるがままに
受け入れること
そしてなにより
そういうことを知ることが
とても大切です
In such a village, with so many sorts of folks,
it would be very important to
learn to understand people different from yourself,
and to accept others as they are.


参考サイト
[1] マガジンハウス, 世界がもし100人の村だったら
  http://magazineworld.jp/books/1361/
[2] Donella Meadows, Archive
  http://www.sustainer.org/dhm_archive/


津田和俊 2008年2月7日

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