持続可能な社会や暮らしの具体像を描く試みとしての国際会議

 
講演会、シンポジウム、国際会議、ワークショップ、研究討論会、セミナー、研究発表会、フォーラム、検討会、ギャラリートーク…。ここ数年、自分の興味があるトピックで、予定さえ合えば(というより研究室を抜け出して)、こういったイベントにふらふらと足を運んでいる。社会や自身の専門分野の動向について見聞を広めると同時に、色々な方との交流や対話ができる大変貴重な場であると考えている。

昨年参加したイベントは、列挙してみると約30余りになる。今回はその中から、終盤の11月から12月にかけて日本で開催された3つの国際会議について、あくまで一参加者の印象から、対比して概観したい。3つの国際会議とは、2007年12月10日〜13日開催の「第5回エコデザイン国際会議(EcoDesign 2007:第5回環境調和型設計とインバース・マニュファクチャリングに関する国際会議)」、2007年12月21日〜23日開催の「第2回サステナブルデザイン国際会議(Destination 2007-2025)」、そして、2007年11月23日〜24日開催の「エコビレッジ国際会議TOKYO 2007」である。


エコデザイン国際会議は、エコデザイン学会連合(Union of EcoDesigners)が主催して、1999年から隔年で開催されているシンポジウムで、今回が第5回目の開催となる。「エコデザイン学会連合」とは、エコデザインに関する情報交換のためのネットワークとして機能することを目的として、複数の関連学会(化学工学会や日本LCA学会など)・協会・工業会が横断的に提携するために設立されている国内連絡会である。この会議において「エコデザイン」という言葉は、製品の省エネ性・分解性・リサイクル性を高める環境配慮設計に加えて、サービスやビジネス戦略によって製品の在り方を大きく変える設計や、社会システムや市民のライフスタイルを持続可能な方向に向けていく設計のことを含めた概念として使われている。会議の内容は講演が主であるが、一般のセッションでは学術論文発表・事例発表・ポスター発表の3種類の講演形式での講演(合計約130件の講演件数)が行われ、さらに今回はその他に5つのプレナリーセッションが企画された。[1]

サステナブルデザイン国際会議は、オープンハウス・LLPエコデザイン研究所内に事務局を置くサステナブルデザイン国際会議実行委員会が主催して、持続可能な社会におけるデザインの役割や相応しい生活価値観の創出と提案・普及を目的として2006年から開催されている。「オープンハウス」は、東京造形大学教授でインダストリアルデザイナーの益田文和先生が代表を務めるデザイン事務所であり、その「LLPエコデザイン研究所」では、環境調和型設計技術をベースに製品設計を考えると共に、持続可能な社会に求められる広義のエコデザインについての研究と提案が行われている。2回目となる今回の会議は、会場を東京から岐阜の世界遺産白川郷に移して、「サステナブルな社会のランドマップに迫る」をテーマに開催された。会議の内容は、5つの基調講演、それから2025年を想定した持続可能な社会の姿を具体的に描きだすため「暮らしを描く」「社会を描く」という2つの分科会に分かれてワークショップが行われた。[2] [3]

エコビレッジ国際会議は、環境保護や社会貢献に関する情報と知恵を共有することに取り組んでいる「NPO法人BeGood Café(1999年〜)」が主催して、2006年から開催されている国際会議である。会議の目的は、エコロジカルな生活を実践している国内外のコミュニティ事例の紹介に加えて、日本型エコビレッジを検討・構築していくための情報共有と連携の場となり、そして、生活者・建築家・住宅関連事業者らが持続可能な社会に向かうライフスタイルチェンジの当事者になっていくことである。第2回となる今回の会議の内容は、「世界で広がるサステナブル・リビング」というテーマで、国内外の多様な形態のエコビレッジの事例紹介に加えて、コーポラティブハウス、コレクティブハウス、コハウジングといったサステナブル・リビングに包括される多様な住まい方の紹介、日本のコミュニティの歴史や現況の紹介など、計16の講演が行われた。最終日の最後にパネルディスカッションや交流の時間が取られた。[4]


以上、それぞれの国際会議の概要として、主催団体の説明・開催の目的・内容(構成)をざっとみてきた。各会議の詳細な報告は主催者側の公式のレポートに委ねるとして、ここからはこれらの3つの国際会議を少し比較してみたいと思う。

まず、全てに共通しているのは、「エコ」や「サステナブル」という言葉を冠していることや上述の概要からも分かる通り「持続可能な社会や暮らしの具体像を描く試み」、少し言い方を変えれば「サステナブルな社会システムおよび産業構造や市民のライフスタイルのあるべき姿を描くプロセス」として、これらの会議の意義が見出されるという点である。ただ、どの会議にも後援として環境省など幾つかの省庁が名を連ねているものの、国内の環境政策における政策決定に直接的につながるような枠組みを持った会議では今のところないようである。気候変動や資源枯渇など地球規模で様々な環境問題が顕在化している中、現代の社会文明が抱える問題を探り、持続可能な文明を構築あるいは再構築していくための、まずは国際的な情報交換の場づくりとしての試みである。


目指している方向は同じである。では、大きく異なる点はというと、その「アプローチの方法」である。主催と共催の団体が全く被っていないことからも当然といえば当然であるが、実際に参加してみて感じた印象も含めて、その違いを以下に述べる。

エコデザイン国際会議は、学会連合の主催だけあっていわゆる国際学会であり、国内外の工学系の研究者・エンジニア等の専門家集団が研究発表や意見交換を行って、現在のグローバル資本主義における社会構造の枠組みの中で、特に産業界における「技術革新」による解決策を模索している。解決のための手法(目標)として、低炭素エネルギーの開発とエネルギー効率の向上、資源生産性や環境効率の向上などが検討されている。個人的に印象に残った研究発表としては、製品設計の源流段階における環境適合設計ツールの導入に関する研究や、国際資源循環システムのシナリオに関する研究が挙げられる。また今回は、環境配慮設計を法的に義務化する世界で最初の法律であり、エコデザイン指令とも呼ばれるEU規制である「EuP Directive」の内容や現況について理解を深めるセッションが行われた。

サステナブルデザイン国際会議は、デザイナー・企業のデザイン部・デザインや環境を学ぶ大学生等が主な参加者である。ここでは、前述の「技術革新」に加えて、人々の意識や社会システムに本質的な変革を起こす「社会革新」の必要性も踏まえて、デザインの果たす役割は何かということを再考することから始まる。そして、多くの人々と持続可能な社会のイメージを共有するために、なるべく具体的な絵をたくさん描く作業が行われる。手法(概念)としては、バックキャスティングやシナリオライティング等が挙げられる。今回は、「ウィンナカフェ方式」を採用したワークショップにより、2025年のサステナブルな暮らしや社会を想定した議論を行い、アイディアを提案にまとめる試みがなされた。

エコビレッジ国際会議は、国内外のエコビレッジ専門家・建築家・NPO関係者、そして市民が参加している。上記の2つの国際会議に比べて、「コミュニティ」や「コモンズ」をめぐる議論を主題としてスタートしている点が特徴である。言い換えると、現在世界中に広がりつつあるグローバル資本主義の社会とは異なる、それに代わるオルタナティブな社会やライフスタイルの提案と実践が課題となっている。まず、エコロジカルな生活を実践している国内外のコミュニティ事例に学び、日本に合ったサステナブル・リビングの在り方を検討すること、そして、参加者自らがライフスタイル変革の当事者になっていくことを目指している。手法としては、パーマカルチャーやエコビレッジの実践、ローカリゼーションが挙げられる。個人的には、そのコミュニティの中で導入されている「技術」の部分に焦点をあてて、これから必要となる技術開発の方向性に関する研究もしたいと思っている。


一概には言えないが、個人的な印象から、順番に大まかに眺めてみると、工学的な視点からは、それぞれ、エンジニアリング(電気電子・機械・材料・情報工学など)、デザイン(インダストリアルデザイン・サステナブルプロジェクトなど)、建築(コミュニティ・住宅・まち育て・都市計画など)がアプローチの中心であり、主義や思想の視点からは、グローバル資本主義あるいは産業資本主義の枠組みから、その他の主義(生命地域主義や各種社会主義など)や文化的多様性まで含めたアプローチへと少しずつずれているように感じられる。ただ、どの国際会議においても、一部の講演を除いて、経済や金融の観点からの考察が少ない印象であり、実現可能性の面から考えてもそれらの十分な検討を加えていく必要があるように思う。


最後になるが、いずれの会議も今回(2007年)初めて参加した。そのため、これまでどういった経緯のもと開催されているか、社会に対して実際にどのような影響を及ぼしているか等、十分に把握できている訳ではない。そのため誤解している部分も多々あるだろうが、その辺りはご容赦いただきたい。今後は、これらの会議に継続して積極的に関わっていくとともに、今回少し試みたように会議の「間」や接点を眺める作業(ふらふらしているからできること)をしていきたい、と同時に、参加者同士をつなげていく役割(これも、ふらふらしているからできること)を担えればと思っている。


参考文献・参考サイト
[1] 梅田靖, 諸報 第5回エコデザイン国際会議(EcoDesign 2007)開催報告, 日本LCA学会誌 Vol.4 No.1 Jan. 2008, 93-96
[2] オープンハウス LLPエコデザイン研究所
  http://openhouse.co.jp/
[3] 益田文和, 飛騨白川郷は村ごと「記憶のデザイン」だった, 日経トレンディネット, 記憶のデザイン 第12回
  http://trendy.nikkeibp.co.jp/lc/eco_masuda/080111_shirakawa-go/
[4] BeGood Café, エコビレッジ国際会議TOKYO2007 レポート
  http://begoodcafe.com/main/archives/ecvc2007_report


津田和俊 2008年2月6日

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そしてなによりそういうことを知ることがとても大切です

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