消費者金融の広告からライフサイクル的思考をリマインドする


消費者金融会社のTVCMは、日本弁護士連合会などの意見書を受けて放送時間や本数が制限されたため一時期ほどではないが、頻繁に目にすることの多い広告のひとつである。放送するために不可欠な警告表現として、どの消費者金融会社のTVCMにも入れられているお馴染みの台詞がある。会社ごとに多少の差異はあるが、大体以下に示すような内容である。


契約内容をよくご確認ください。
収入と支出のバランスを大切に。
無理のない返済計画を。


さて、今回はこの台詞を「消費者金融会社からお金を借りる」のではなく、「地球の自然環境から資源を借りる」ということに関する警告表現と読み替えて考えてみる。ここでいう資源とは、水、食料、鉱物、森、土地など、人間活動を維持するために必要なもの全てを指している。

まず、「契約内容をよくご確認ください」について。この契約は、自然環境と人間社会の間に結ばれているものである。人間も生物である以上、自然環境の一部であり、食物連鎖の構成員であり、また、自然環境にある資源から生産した物質・エネルギーを消費することで生活している。つまり、この場合の契約内容とは、簡単に言えば、自然環境と人間社会はつながっているということ。このつながっているという事実をあらためて再確認することが重要であると、この台詞は語っているのである。

次に、「収入と支出のバランスを大切に」について。前述の通り、自然環境と人間社会がつながっていることを再認識すると、次はその間の物質・エネルギーのやりとり、インプット・アウトプットを考えてみる。ここで重要なのは、現在の自分と直接関係のある範囲でのみの損得勘定ではなく、その一生のライフサイクルを通じたインプット・アウトプットの収支を考えるということである。この捉え方をしてみることによって、いかに自分が自然環境に依存した生活をしているのか考え直すことができる。

最後に、「無理のない返済計画を」について。さて、借りたものは還さなければならない。それは、自然環境に対して、と同時に、将来世代に対してである。しかし、借りている間にどうしても汚れたり、壊れたり、なくなったりしてしまうのが資源である。そのため、きちんと還すためには、あらかじめ借りる段階で、借りる量を計画的に減らしていく必要があるのである。

自然環境と人間社会とのつながりを再認識して、その間の全体の入力・出力を整理して、さらにそれらを計画的に減らしていくという考え方。このたった三行の台詞は、一生のライフサイクルを通して物事を考えるというライフサイクル的思考(Life Cycle Thinking)の要点を見事に押さえている。同じ内容の台詞でも意識を少し変えるだけで、その意義を大きく変えることができる。既存の広告をうまく利用して、持続可能な社会を構築するためのキーコンセプトであるライフサイクル的思考をリマインドする一つの知恵である。

津田和俊 2007年6月26日

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